美容師が考える「タンパク変性」という話
「昔はもっと髪が柔らかかった」
「カラーをするたびに、髪がパサパサする」
「縮毛矯正をすると、最初はキレイなのに時間が経つと硬くなる」
こんな経験はありませんか?
実は、髪のダメージを考えるうえで、とても大切なのが
「タンパク変性」
という現象です。
難しそうな言葉ですが、今日はできるだけ簡単に説明します。
そもそも髪の毛は何でできている?
髪の毛の主成分はケラチンというタンパク質です。
イメージすると、
髪=タンパク質でできた細長い繊維
です。
だから髪をキレイに保つには、
「何を入れるか」
だけではなく、
「このタンパク質をどう守るか」
も非常に重要になります。
「タンパク変性」って何?
簡単にいうと、
タンパク質の形や性質が変わってしまうこと
です。
例えば、生卵を思い浮かべてください。
透明だった卵白を加熱すると、白く固まりますよね。
これはタンパク質が熱によって変化したからです。
髪の毛もタンパク質でできています。
もちろん卵と髪では構造が違うので、まったく同じではありません。
でも、
「タンパク質は条件によって性質が変わる」
という考え方は同じです。
髪のタンパク変性に関係するもの
髪にとって負担になりやすいのが、
・熱
・アルカリ
・薬剤
・水分状態
・摩擦
・紫外線
などです。
特に美容室では、
カラー・パーマ・縮毛矯正・アイロン
など、髪に化学的・物理的な変化を与える施術があります。
これらは髪をキレイにするために必要な技術ですが、
使い方を間違えると髪への負担も大きくなります。
じゃあ「傷んだ髪=タンパク質が全部なくなった」の?
ここは少し違います。
髪が傷んだからといって、
「タンパク質が全部なくなった」
という単純な話ではありません。
髪の内部では、
タンパク質の構造が変化したり、水分を保持する環境が変わったり、髪の内部・表面のバランスが崩れたりする
ことで、
・パサつく
・硬く感じる
・ゴワつく
・ツヤがなくなる
・まとまりにくくなる
といった変化につながります。
つまり、
髪のダメージを考えるときは「何かを足す」だけではなく、「今ある髪をどう守るか」が大切
なんです。
だから「トリートメントをすれば大丈夫」ではない
ここが美容師として僕が一番伝えたいところです。
傷んだ髪を見て、
「トリートメントをしましょう」
というのは間違いではありません。
ただ、それだけではありません。
例えば毎月カラーをして、
そのたびに髪へ大きな負担がかかっているとします。
その状態で、
「傷んだからトリートメントをする」
を繰り返しても、
そもそもの負担が減っていなければ、いたちごっこになってしまいます。
だから僕は、
「何を補うか」だけではなく、「どうすればこれ以上負担を増やさないか」
を考えることが大切だと思っています。
髪は「今」より「未来」を考える
40代を過ぎると、
「昔と同じカラーをしているのに、なんか髪が違う」
と感じる方が増えてきます。
ハリ・コシがなくなったり、
毛先がまとまらなくなったり、
白髪が増えてカラーの回数が増えたり。
さらに、
カラー+アイロン+紫外線+年齢による髪質の変化
などが重なります。
だからこそ、
今キレイにするだけではなく、半年後、1年後の髪を考えて施術する。
これが大切だと思っています。
美容室でできること
僕が考えているのは、
「とにかく強いトリートメントをする」
ということではありません。
髪の状態を見ながら、
① 今の髪の状態を確認する
カラー履歴、縮毛矯正の履歴、白髪染めの頻度、アイロンの使用など。
まずは髪が今どんな状態なのかを確認します。
② 薬剤の負担を考える
必要以上に強い薬剤を使わない。
必要なところだけに必要な力を使う。
③ 水分環境を整える
髪のタンパク質を守るためには、髪の中の水分環境も重要です。
「乾燥しているからオイルをつける」
だけではなく、
髪の内部環境を考えて施術する
という考え方です。
④ 必要な処理を組み合わせる
髪の状態によって、
トリートメントだけでいい場合もあれば、
カラー前後の処理、
縮毛矯正時の処理、
髪の状態を整えるためのケア
が必要になる場合もあります。
「髪に何を入れるか」から「髪をどう守るか」へ
美容業界では、
「この成分が髪にいい」
「この成分を入れると補修できる」
という情報がたくさんあります。
もちろん、それも大切です。
でも僕は、
「入れること」ばかりを考えるのではなく、そもそも髪のタンパク質をできるだけ変性させないこと。
ここにも注目しています。
髪は一度傷んでしまうと、肌のように自分で元通りに再生することはできません。
だからこそ、
傷んでから頑張るより、傷ませにくい施術を積み重ねる。
これが、これからの美容には大切だと考えています。
最後に
髪の毛は、
「今日キレイならOK」ではありません。
今日のカラー。
今日の縮毛矯正。
今日のアイロン。
その一つ一つの積み重ねが、
数ヶ月後、数年後の髪を作ります。
だから僕は、
「今の髪をキレイにする」ことと「未来の髪を守る」こと。
この2つを同時に考えた美容をしていきたいと思っています。
髪の悩みが増えてきた方は、
「何のトリートメントがいいですか?」
ではなく、
「今の私の髪には、何が負担になっていますか?」
と聞いてみてください。
そこから、本当の髪質改善が始まるかもしれません。